草の花 幸田文著
「なにもかもが、いけないことだらけでだめだった」で、はじまる幸田文女学校時代のエピソード満載の随筆。ここで、幸田文は第一志望のお茶の水女学校を受験し、失敗するのであるが、それが、そばに居たらさぞはらはらするだろう、ということだらけだ。
生母を早くに亡くし、継母とともに受験会場に行くも、最初から受験会場に漂う生徒たちの雰囲気に違和感を覚える。
そればかりでなく、受験前に当然すませておくべき生理事情を、うながされていながら拒み、試験中にその症状に悩まされてしまう。全身の毛穴が怖気だつもこらえる。
もともと算数も国語も難問だらけだったと書かれているものの、小さい子供でもあるまいし、これではもう運命に導かれる他はない。
継母のコネで別の女学校に入学。そしてここが「以外にも当たり」だったらしい。けれども、「もっと読みたいな」と思うところで断ち切られてしまう。「鉛筆が離れてしまった」と書かれて終わり、あとは散文が続く。
お茶の水女学校の「かっこ悪い」エピソードから始まるこの一連が輝いている。苦労の多い「継母との繋がり」にパッと光が射したような一瞬を切り取ってすがすがしい。