moonfishwater28’s diary

気がつくとわたしの心から音楽が奪われていた。取り返そうとするけれど、思い出すのは昔のレコードばかり・・・今はもう手元に無いレコードたちを思い出しながら記憶の隅に眠る音、内側を作る本の言葉を集めたい。

百歳の美しい脳   デビッド・スノウドン

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デビッド・スノウドンが疫学研究者になったのは「ニワトリ」が原因だという。思春期に、「体操選手」になることをふいにあきらめた彼は、放課後の時間を「ニワトリの飼育」にあてがう。裏庭に小屋を作り、品評会に出して賞を貰ったり、卵を売ることで小遣い稼ぎをしたりし始め、自然、より良い「ニワトリ」を育てるために、病気を防ぐ方法などにも熱中する。

「本人が意図するしないにかかわらず、人生の最初の頃のさまざまな条件がのちに病気の原因になったり、反対に病気を防いだりする。」引用

ともあれ、デビッド・スノウドンは、「アルツハイマー病」の研究のために修道女たちに「死後、脳組織を献体してもらいたい」と申し出て、のちには、修道院の中に「研究室」を持つに至る。

APOE4遺伝子、染色体の名称など、多少専門的な難しい言葉と説明も出てくるものの全体として受ける印象は、「素直で、嫌味が無く、明るい修道女達」と著者との心温まる人間的なやり取りである。

 彼は、修道女達を研究対象としてではなく、あくまでも、ひとりの個人として受け入れ、見取り、最後まで暖かく見守り接したのである。

一昔前までの暗い修道院の印象は薄れ、食事にはサラダバーがあったり、夕食後、カードゲームやスクラブル、テレビのスポーツ観戦に熱中する修道女、ハリー・ポッターを読む修道女、筋肉トレーニングする姿もある。そういう暖かい雰囲気が伝わるのがこの本のなにより捨てがたい良いところである。