夏が終わって
夏の収穫はバッタ一匹、トンボ一匹、しおからトンボ二匹、糸トンボ一匹、蝉一匹でした。ばっさばっさ一諸に草はらを歩く。しげった雑草のすきまからぴょんとバッタが飛ぶ。
「ほれほれいたよ」と指差すとVはすぐにわかって網を落す。
それから注意深く虫かごにバッタを入れる。
草をひとかけらちぎって入れ「これを入れるとバッタが安心するんだよ」と言うとかなり納得している。「もっと入れよう」と、言って草をちぎって入れている。あとでここの庭をきれいに掃除してバーベキュー出来るようにしようか、と言ってみた。
Vは「でも」と言った。
「そうしたらきっと虫がいなくなるよ」
「そうだね」と私も言った。
草がざあっとゆれる。
Vは「虫がいてくれて採ることが出来て感謝してるんだよ。ありがとうって思っているよ」
と言ったのでわたしは泣きそうになった。雑草だらけで良いと言うVの気持ちは昔、草はらを駆け回って遊んだ昭和の時代の少女のそれと似ていた。
でも、秋のコスモスがゆれているのもいいな・・・言葉にはせずに胸の中にそっとしまった。