moonfishwater28’s diary

気がつくとわたしの心から音楽が奪われていた。取り返そうとするけれど、思い出すのは昔のレコードばかり・・・今はもう手元に無いレコードたちを思い出しながら記憶の隅に眠る音、内側を作る本の言葉を集めたい。

夜中の薔薇   向田邦子著

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印象に残ったところは大方、向田家に伝わる小さな簡単な、けれども昔懐かしいお惣菜の数々と、それらの背景である。鰹節は、「硬い石」みたいな塊で、毎朝、タオルに包んでご飯が炊けるときの蒸気で蒸らして削りやすくしたと言う。丹念に火であぶった海苔と醤油でまぶした鰹節を交互に重ねた海苔弁は、前の日が来客などで忙しかった朝などに作られていた。

向田邦子は、外国旅行から帰ると、この海苔弁を作って食べたそうである。塩味の卵焼きと生姜醤油で煮た豚肉とともに食すると言う。是非、真似してみたいものである。その際は、生姜をびっくりするくらいたくさん入れるのが良いらしい。

向田邦子の育った家庭、家族の有り様は、古き良き日本の家庭、家族のそれである。

幸福な人の「内緒話」を聞いているような、私にも少しはそれがあったかな、と「懐かしい何か」を、思い出そうとしている。

幸田文のような「苦労を踏みしめて立っているような」あの「奥深い余韻」は残念ながら無いのだが、テレビの良質なホームドラマを生んだ著者の「古き良き」は、エッセイのそこここに漂って現代に伝えている。